個人事業主のharumina(@OrangeOlive_hm)です。これから「開業届」を提出しようとしている皆さん。ちょっと待ってください!
開業届を提出したら、あなたも「個人事業主」です。たとえ収入が0(ゼロ)だとしても、何らかの「事業を行っている人」とみなされます。
開業届を提出する前に、「開業届を出したら…どこに影響が出てくるのか」確認しておきませんか?
もくじ
「開業届」とは?
正確には「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。国税庁のホームページからダウンロードすることができます。
[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|申告所得税関係|国税庁
開業届は、これから開業する人が、税務署に「個人事業主として事業を始めました」と報告するための書類です。
提出期限は、開業から1ヶ月以内です。提出期限を過ぎても特に罰則などはありませんが、開業する人が出しておくべき書類です。
開業届を出したら…「失業保険」がもらえない!?
例えば、今あなたは、(雇用保険に入って)会社員として働いている状態だとします。
もし、仕事を辞めて”失業の状態”になれば、あなたは所定給付日数分の「失業保険」をもらえる可能性があります。
ところが、開業届を出すタイミングによっては、仕事を辞めても「失業保険」がもらえないかもしれないんです。
なぜ、失業保険がもらえないのか?
失業保険がもらえる大前提が、あなたが”失業の状態”であることだからです。
※「失業」とは・・・
離職した方が、「就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態にある」こと(「ハローワークインターネットサービス」サイトより)
開業届を提出したあなたは、「個人事業主」です。つまり、何らかの事業を行って(働いて)いる人なので、”失業の状態”ではないとみなされます。
だから、個人事業主は失業保険がもらえない可能性が高いのです。
会社員のまま「開業届」を出したら…
あなたは、会社員兼「個人事業主」になります。
個人事業主でもあるため、のちに会社員の仕事を辞めても、”失業の状態”ではないとみなされ、失業保険はもらえない可能性が高いです。
会社員を辞めてから「開業届」を出したら…
失業認定の手続きをする”前”に提出
あなたは「個人事業主」です。”失業の状態”ではありませんので、失業認定の手続きをしても、失業保険はもらえない可能性が高いです。
失業認定の手続きをした”後”に提出
あなたは「個人事業主」です。”失業の状態”ではありませんので、ハローワークに開業したことを伝えましょう。
この場合、開業の前日までの失業認定を受けた日数分の失業保険はもらえます。
開業の準備を始めた(あるいは、開業を決意した)時点で、”失業の状態”ではないとみなされることが多いようですので、ハローワークで説明される際はご注意を…
「再就職手当」はもらえるの?
支給の要件を満たせは、開業届を提出した個人事業主でももらえます。
「再就職手当」とは、失業保険(基本手当)の受給資格がある人が、支給日数を一定数以上残して”安定した職業に就いた”場合に支給されるお金のことです。
”安定した職業”といっても、開業したばかりの個人事業主(の私)でも支給されましたのでご安心を。まずはハローワークに相談してみてください。
不正受給になる!?
※不正受給の典型例として・・・
自営や請負により事業を始めているにもかかわらず、「失業認定申告書」にその事実を記さず、 偽りの申告を行った場合(「ハローワークインターネットサービス」サイトより)
個人事業主であることを隠して失業保険をもらうと、「不正受給」になり”3倍返し”を命じられることもあるそうです。
不正受給にならないようくれぐれも(開業届を提出するタイミングに!?)注意してください。
開業届を出したら…「扶養」に入れない!?
例えば、今あなたは、会社員の夫の「扶養(※)」に入っている状態だとします。健康保険も年金も、あなたの分の保険料は負担していませんよね。※社会保険(健康保険・年金)の扶養のこと
ところが、開業届を出すことで、夫の「扶養」から外れて、保険料を負担しないといけなくなるかもしれないんです。
「扶養」に入る条件とは?
社会保険の扶養に入る条件は、一般的に「年間収入(★)130万円未満」といわれています。
★年間収入とは、現時点(から今後1年間)での見込み収入額のこと。月額108,333円を超えると扶養から外れます。
ところが、「健康保険」の扶養に関しては、会社員の夫が加入している健康保険(保険者)によって、扶養に入る条件が異なるんです!
自営業者(個人事業主)は扶養に入れない!?
収入に関係なく、「自営業者(個人事業主)は扶養には入れない」と定めている健康保険があります。
その場合、開業届を提出して「個人事業主」になったら、扶養から外れることになります。
年間収入の計算に「経費」を認めない!?
個人事業主でも扶養に入れますが、年間収入の計算に「経費」を一切認めない健康保険があります。
個人事業主の場合、収入から必要経費を差し引いた額で判断されることが多いのですが、単純に収入額だけで判断されるということです。
すべては健康保険の判断次第
あくまで夫が加入している健康保険が「扶養に入れる」「扶養に入れない」を判断します。
「私はまだ扶養に入れるはず!」とどんなに訴えても、「あなたは扶養に入れません」と言われたら、健康保険の扶養から外れることになります。
個人事業主になっても、「収入が少ないうちは夫の扶養に入ろう」と考えている方は、事前に確認されることをオススメします。
年金の扶養は?
「年間収入(★)130万円未満」です。
★年間収入とは、現時点(から今後1年間)での見込み収入額のこと。月額108,333円を超えると扶養から外れます。
年金の扶養の場合、個人事業主は、年間収入の計算に「経費」が認められていますので、収入から必要経費を差し引いた額で判断します。
ただし、「必要経費がどこまで認められるか」については、管轄の年金事務所(日本年金機構)の判断にもよると思いますので、こちらも事前に確認されることをオススメします。
開業届を出したら…「青色申告」をしよう!
これまで、開業届を提出することで「失業保険がもらえない!?」「扶養に入れない!?」など、なんだかデメリットばかりご紹介してきました。
「まだ開業届出さないほうがいいのかな・・・」と個人事業主になることをあきらめてしまおうと考えているあなた。ちょっと待ってください!
ここで開業届を提出する最大のメリットをご紹介します。
青色申告の最大65万円特別控除
個人事業主になると毎年2月〜3月に「確定申告」を行うことになります。
確定申告とは、個人事業の1年間の所得(稼ぎ)と税額(所得税)を自分で計算して税務署に申告し、税金を納めることです。
この時に「青色申告」を選択することで、最大”65万円”の控除を受けることができます。つまり、1年間の収入(売上)から最大65万円も差し引いてもらえるんです!
開業届を提出すると、このお得な「青色申告」を選択することができるようになります。
例えば、1年間の収入が130万円だったとします。個人事業主ですので、ここから”必要経費”の10万円をさらに差し引くことができます。
130万円-10万円=120万円
この120万円が、1年間の”所得”です。ここから、さらに各種”控除”を差し引きます。(今回は、基礎控除のみ)
120万円-38万円=82万円
そして、青色申告の最大65万円特別控除を受けることができたら、さらに・・・
82万円-65万円=17万円
この17万円が”課税所得”といって税金の対象となる金額になります。青色申告をしなかったら(白色申告なら)、82万円・・・この差大きいですよね。
「青色申告」をするために必要なこと
「所得税の青色申告承認申請書」の提出
開業届と一緒に「所得税の青色申告承認申請書」という書類も提出してください。国税庁のホームページからダウンロードできます。
[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|申告所得税関係|国税庁
提出期限は、開業日から2ヶ月以内です(開業日が1月1日〜15日の場合は、その年の3月15日まで)。
提出するのを忘れてしまうと、今年度は青色申告することができなくなってしまいますので、開業届と一緒に提出することをオススメします。
「青色申告」ができる会計ソフトを選ぼう
青色申告の65万円控除を受けるためには、「複式簿記」の帳簿作成が必要となります。さらに「損益計算書」「貸借対照表」の作成も必要です、なんて言ったら・・・難しそうだから、あきらめますか?
でも、実はここであきらめたらもったいないんです。
なぜなら今は、そんな簿記の知識がない個人事業主でも65万円控除を受けることができる便利な会計ソフトがあるからです。
私のオススメは、「マネーフォワードクラウド確定申告」です。
1ヶ月あたり880円(※年額プランの月額換算)〜とかなりお得に使うことができます。
クレジットカードや銀行の取引データを自動取得してくれる機能が特に便利!
とりあえずクレジットカードや銀行のデータをどんどん自動取得しておけば、あとは確認して登録していくだけで済みます。とってもラクなんです!
クレジットカードによっては、過去数ヶ月分しかデータを取得できないものもありますので、会計ソフトは早い時期に導入しておくことをオススメします。
「開業届」を出しても後悔しないために・・・
まず、開業届を提出するタイミングに注意してください。決して”不正受給”することのないように・・・。3倍返しですよ。
次に、「扶養」に入っている方は、扶養から外れる条件を事前に確認しておくことをオススメします。そうすることで、突然「あなたは扶養から外れます」と連絡がきても慌てません(笑)。
さいごに、せっかく開業届を出して確定申告をするなら「青色申告」をした方が絶対にお得です。
確定申告の時期になって”後悔”しないためにも、開業届と一緒に「所得税の青色申告承認申請書」も忘れずに提出してくださいね。
こんにちは。会社員を今年3/15に退職して、退職理由が 期間満了 のため3カ月の待機期間なしで8/19が最後の認定日で失業保険をもらい終わりました。開業届を8/31付けで出そうかと考えていますがいかがなものでしょうか?失業中には準備はしていましたが、収入もなく申告もしていません。
ご質問について私が調べた範囲で回答させていただきますが、専門家ではありませんので、あくまで参考程度にご覧ください。
開業届を提出するのは、問題ないと思いますが・・・
念のためお伝えします。
開業の準備を始めた(あるいは、開業を決意した)時点で、”失業の状態”ではない、失業保険を受給する資格がないと判断されることが多いようです。ただし、「開業の準備も少しずつ進めてはいるけど、まだ迷っているから、求職活動もしたい」という場合は、ハローワークが本人から詳しく話を聞いてからの判断になるようです。収入の有無は関係ありません。
詳しくは、管轄のハローワークに確認されてください。